明橋大二著、太田知子イラスト『HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子』(1万年堂出版、2018年)は人一倍敏感な子ども(HSC)の育て方をアドバイスする書籍である。子どもに合わせた育児の本である。漫画やイラストが多く読みやすい。

HSCは5人に一人いる。一言で言えば慎重派であり、そのために集団生活では行動が遅いと見られる場合もある。慎重派と大胆派がいることは種の生存戦略として都合が良いからである(64頁)。現在の民間企業ではダイバーシティが競争力になると考えられている。同調圧力で均質さを求める昭和の日本的集団主義は、競争力を喪失する。

本書は、敏感で慎重な人は科学者などの職に就いてきたと述べる(65頁)。しかし、HSCは、この職に向いているというよりも、全ての職種にHSCの人が必要だろう。それが硬直性を壊すことになる。公務員組織に民間感覚が必要と言われるが、体育会営業を入れたい訳ではなく、様々な利用者視点で考えられる人が求められる。

本書はHSCの子に特化してアドバイスしているが、その子どもの側に立った接し方は非HSCの子に対しても有益に感じた。昭和的な集団主義への疑問はHSCか否かに関わらず抱けるものである。「またまだこの社会は、人と同じことが求められ、違っていると、わがままとか、親の育て方がおかしいとか言われかねない世の中です」(215頁)。

相手の個性や人格を尊重する点で子どもだけでなく、全ての他者への接し方への参考になる。たとえば本書は自分と他人の間に不可侵の境界線を引くことをアドバイスする(146頁)。高見綾『ゆずらない力』(すばる舎)でも「健全な領域意識をもつ」ことを求める。「自分と他人との間にしっかり線を引いて、自分の自由を守り、相手の自由も尊重することです」。同調圧力の強い日本社会で大切な発想である。

HSCと言っても多様であり、あまりHSCか否かで子育ての方針を分ける意味は感じなかった。一方で本書は学校の教師に説明する際に使われることも想定している。そこではHSCという多数派とは異なる子どもがいるという説明の仕方は有益だろう。